日本は祝祭日の数だけ見ると、世界的に休みが少ない国だとは言えないのですが、日本より祝日の数が少ないフランスでは、休暇が連続5週間まで取得できるよう法律で定められているため、夏に1ヵ月のバカンスを取ることが多いようです。アメリカでも、国が定めている祝日自体の数は少ないのですが、州ごとに定められた祝日がありますし、祝日と、それに伴う休暇の取り方は国によって様々です。
本テキストでは、「ベトナム人にとっての祝日とは?」「「夏休み・長期休暇の過ごし方」など、ベトナム独特の祝祭日や記念日についてわかりやすく解説します。ぜひ、あなたのベトナムビジネスにお役立てください。
1. ベトナムの祝祭日・記念日
ベトナムで使われる暦は「新暦」と「旧暦」
ベトナムで使われている暦は2つ。「新暦(太陽暦)」と「旧暦(太陰暦)」です。通常使用するのは日本と同じく新暦ですが、お祭りなどは旧暦が基準とされるため、毎年日にちが変わります。
ベトナムの祝祭日について
詳細は後述しますが、ベトナムの祝祭日は、下記の5つです。
・テト(旧正月)
・雄王記念日
・南部ベトナム解放記念日
・メーデー
・建国記念日
日本やほかの国に比べると、かなりシンプルです。
ベトナムの記念日
ベトナム独自の記念日としては、下記のような記念日があげられます。
・共産党設立記念日
・ディエンビエンフーの対仏戦勝記念日
・ホー・チ・ミン生誕日
・南北統一記念日
・戦死者追悼の日
・八月革命勝利記念日
・ベトナム音楽の日
・国連加盟記念日
・民族解放戦線の創立記念日
・人民戦線の創立記念日
どれも日本にはあまりなじみのない記念日かもしれませんが、その記念日の多くがベトナム戦争関連であることには注目です。
2. ベトナム人にとっての祝日とは? 夏休み・長期休暇の過ごし方を解説
このセクションでは、タイトルにも掲げている、ベトナムの夏休みも含めた、ベトナム人にとっての祝日および、長期休暇の過ごし方について解説します。
ベトナムは休日が少ない!?
結論から言うと、ベトナムは世界でも土日以外の祝日が少ない国です。
年間祝日数は、「1月1日(新暦の元旦)」「テト(旧正月)期間」「雄王記念日」「南部ベトナム解放記念日」「メーデー」「建国記念日」の9日だけ。その中でも連休となるのは旧暦の正月、旧正月である「テト」と「建国記念日」のみ。「テト」については後ほど詳しく解説します。
ちなみにお隣の国であるカンボジアは世界でも祝日数が多い国で、2020年の祝日数は22日。2019年は28日もあったそうです。陸続きの隣国でも、かなり異なるようですね。
ベトナムには夏休みがない!?
ベトナムと言えば、夏の暑さが厳しいお国柄。さぞかし優雅な夏休みやバカンス期間があるのでは……? と思いきや、ベトナムの社会人には夏に夏季休暇やお盆休みのような特別な休暇をとる習慣がありません。旧暦の7月15日、中元節には両親や祖父母といった目上の親族を敬う習慣があるようですが、こちらも特に休暇をとることはないようです。
ちなみに、学生には2〜3ヶ月ほどの夏休みがありますが、春休みや冬休みはありません。せっかくの長期休暇ですが、塾に通ったり就職活動の準備を始めたり、学生たちもとても勤勉。勤勉な国民性で知られるベトナム人ですが、その国民性は長い休暇を取らない習慣からも培われているのかも知れませんね。
いわゆる自由に取れる「休暇」ではありませんが、ベトナムにも最近は社員旅行を福利厚生の一環として実施する企業が現れたようです。海外企業の拠点がベトナムに増えている今、これからはベトナムの社会人にも夏季休暇をとる習慣が少しずつ根付く可能性もあるのではないでしょうか。
ベトナムのお正月(テト)とは?
ベトナムでもっとも重要な祝日が、「テト」です。
旧暦の正月、いわゆる旧正月ですが、ベトナムの社会人にとっては年に2つしかない長期休暇の1つでもあるため、帰省はこの時期に集中し、帰省ラッシュによる大きな混雑が起きます。また、テトの間は公的機関をはじめ、多くの店舗が休業となります。
3. ベトナムの祝祭日を詳しく解説
このセクションでは、前項までで述べてきたベトナムの祝祭日について、それぞれ詳しく見ていきましょう。
新暦正月の元旦
1月1日
新暦の元旦です。ベトナムでは娯楽や旅行を楽しむ人が多いようです。
テト(旧正月)
旧暦の正月、旧正月である「テト」は、前述したとおり、ベトナムでもっとも重要な祭日です。連休の日程は、毎年ベトナム政府が決め、発表しています。
雄王記念日
雄王(フンヴォン)とは、ベトナム史上において、紀元前に存在したとされる伝説の国家「文郎国(ヴァンラン国)」の統治者で、ベトナム北部から中部までを初めて統一した人物であると言われています。
この祝日は雄王(フンヴォン)の命日とされる旧暦の3月10日にあたり、2020年は4月2日となりました。建国のために尽力した雄王(フンヴォン)の功績を称えるもので、伝統的な祭りが毎年、フート省のフン寺で行われます。
南部ベトナム解放記念日(戦勝記念日)
4月30日
1975年、南ベトナム解放民族戦線の攻撃により、南ベトナムの首都であるサイゴン(現在のホーチミン市)が陥落し、南ベトナムは無条件降伏しました。その日が4月30日であったことから、祝日に制定されました。
メーデー
5月1日
世界各地で毎年5月1日に行われる労働者の祭典がメーデーです。ベトナムではこの日は祝日とされています。
建国記念日(独立記念日)
9月2日
ベトナムの革命家であり、ベトナム民主共和国初代主席のホー・チ・ミンは、1945年9月2日にハノイにおいてベトナムの独立宣言を発表し、東南アジア初の社会主義国家が誕生しました。この日にちなみ、ベトナム民主共和国の成立を記念する祝日として制定されたのが建国記念日です。
ホー・チ・ミンが奇しくもこの日と同じ、1969年9月2日に亡くなったことから、遺体がガラスケースに入れられて安置されているホーチミン廟には、ベトナム全土から多くの人々が参拝に訪れます。
ベトナムの祭日について
ベトナムにもたくさんのお祭りがあります。ベトナムのお祭りは、基本、旧暦に合わせて行われます。もっとも規模の大きなお祭りはなんと言ってもフート省のフン寺で雄王記念日に行われるお祭りですが、もちろんその他にも大小さまざまなお祭りが多数あります。
南部で行われる規模の大きなお祭りといえば、アンザン省チャウドックで、旧暦の4月23日に行われる、女神スーの祭りです。
また、観光地として人気のホイアンで毎月旧暦の14日に行われるのが「ホイアン・ランタン祭り」。街の家々からは明かりが消え、カラフルな提灯が街に灯る、幻想的なお祭りです。毎月行われることもあり、観光客にも人気のようです。
4. ベトナムの記念日を詳しく解説
前述したベトナムの記念日には、記念式典などが開催されます。特に祝日指定はされていませんが、ベトナムの歴史にも触れる内容なので、こちらもチェックしておきたいところです。
共産党設立記念日
2月3日
ベトナム共産党の創立記念日です。2020年の2月3日にはハノイにおいてベトナム共産党創立90周年記念式典が開催されました。
ホー・チ・ミン生誕日
5月19日
ベトナム民主共和国初代主席のホー・チ・ミンの生誕日です。2015年は生誕125周年であることから、ベトナム初の歩行者天国、グエンフエ通りに新しいホー・チ・ミン像が建立されました。
2020年の生誕135周年には記念切手が発行されるなど、初代主席は今も国民に愛されています。ベトナム国民からは『ホーおじさん』と呼ばれているのだとか。
戦死者追悼の日
7月27日
戦争傷病者・烈士記念日とも。国家の為に戦闘に貢献した英雄烈士、傷病兵を敬い、戦死者を追悼する日です。
八月革命勝利記念日
8月19日
総蜂起の日とも言われます。
1945年8月17日に始まり、ベトナム独立同盟(ベトミン)が総蜂起してベトナム帝国を倒した八月革命を記念した日です。八月革命がきっかけで、この半月後には東南アジア最初の社会主義国家である「ベトナム民主共和国」が成立しました。5. 祝日が世界でもっとも少なく戦争に関連する記念日が多い国
ベトナムの祝日と祭日には国の歴史が深く刻まれている
勤勉な国民性が作り上げたのか、勤勉な国民性がそれによって作られたのか、どちらが先かはわかりませんが、ベトナムは祝日が世界でも非常に少ない国のようです。
また、記念日はベトナム民主共和国初代主席であるホー・チ・ミンや、戦争にちなんだものが多く、ベトナムのこれまでの歴史が深く刻まれています。国の成り立ちに思いを馳せる機会が多いのが、愛国心が非常に強いと言われるベトナム人の国民性を培っているのかも知れません。
ベトナム企業とビジネス上のやり取りを行う際には、ほかの国に比べてホリデーシーズンを考慮することはあまりないようですが、それでも旧正月など、公的機関も長期休暇となる祝日があることは無視できません。ベトナムでビジネスをする際には、現地の政治経済や文化はもちろん、その歴史が刻まれた祝日や記念日なども心に留めておきましょう。
参照元: digima-japan.com
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